信州大学医学部山岳部のブログ

前穂4峰正面壁~松高ルート/北条=新村ルート

time 2019/08/15

前穂4峰正面壁~松高ルート/北条=新村ルート

★エリア:北アルプス南部,前穂東面の岩場

★日程:2019年7月28日~7月30日

★メンバー:左右田,千村

★天候:ほとんどガス.29日の午後~30日にかけて時折晴れ間が広がる.

★タイム:

(7月28日)05:40上高地BT→06:20明神館→07:00徳沢→07:10新村橋→0810奥又白谷・中畠新道分岐0825→1100奥又白池1140→1140~1700奥又白谷,取付きなどの偵察→1700奥又白池

(7月29日)11:00奥又白池→11:20遭難碑→12:55北条=新村ルート取付き(登攀開始)→16:00トップアウト→16:55Ⅴ・Ⅵのコル17:20→17:50奥又白谷→18:30奥又白池

(7月30日)05:30奥又白池→05:50遭難碑→07:20松高ルート取付き(登攀開始)→10:45トップアウト11:00→11:50Ⅲ・Ⅳのコル→12:45前穂頂上→13:00紀見子平13:20→14:30岳沢小屋14:40→15:20風穴→15:50上高地

★ ★ ★

 前穂4峰正面壁は涸沢から左手に見える前穂北尾根の丁度東面に位置する岩場で,松高ルートなど,信州大にゆかりのあるルートがあることなどから一度は触れておきたい岩場であった.

 前回は海の日の三連休に計画を企てていたが雨予報のために明星に転戦.それでも取付きが濡れている疑惑があり,半ば天候についてはトラウマ状態であったが,事前の天気予報にてどうにか持ちそうであるということで突っ込むことにした.

 上高地から続く単調な林道を進み,徳沢から10分ほどのところにある新村橋を渡る.パノラマコースをせかせかと登り,しばらくすると松高ルンゼが左手に見え,中畠新道の分岐が現れる.新道の入り口にはレリーフがある.以後,木登りやハイステップなどを交えた悪路を2時間半ほど進むと奥又白池に到達する.途中,常念山脈側の晴れ間は見られたものの,我々が進む方向の奥又側は黒っぽいガスで覆われており,嫌な予感しかしなかった.

中畠新道分岐
奥又白池

 11時頃に池に到着.あわよくば一本登ろうと思ってはいたが,東壁側には依然,どんよりとしたガスに覆われており,断念.この日は偵察のみとした.

4峰正面壁

【北条=新村ルート】

 7月29日は朝から小雨と曇りで岩場が濡れているだろうということで、テントの中で不毛な下ネタ連想ゲームなるものと、これとは逆に有意義でしかない前々日の大学の試験の答え合わせをした.なんだかんだいつも登れてしまう二人だったので沈殿に慣れておらず,しびれを切らし,偵察がてら基部まで行ってみることにした.ちょうどC沢を詰めたあたりでにわかに晴れだし,行けそうだということで松高に行こうとしたが北条新のとりつきまで登ってしまったために北条新に取付いた.

 以下北条=新村ルートの登攀について

ハイマツテラスまではピッチを三つに切って登った.

1P:30M左右田リード.快適なフェースクライミングで残置ピトンを利用.カムは用いず.

2P:45M千村リード.遠くに残置スリングが見えたので、それに向かって右上した。ロープいっぱいの直前で、ちょうど見えていた残置支点に到着。

2P目

3P:20M左右田リード.このピッチでハイマツテラスに出た.ハイマツはなかったが,青白ハングという名のごとく,続く岩がなんとなく青白かった.ダイレクトルートと思しきピトンのラダーが直上しており,次のピッチで登ったのはもう少しカンテ奥の凹角っぽい所である.

ハイマツテラスにて

4P:(Ⅳ,A1,核心)千村リード.フリーで突破しようと試みていたが,荷物をしょっていたこともあり困難でA1で抜けることになった.

4P目出だし

5P:(Ⅳ)左右田リード.このピッチは難しいというよりは怖い.全体を通して岩が悪く,持つホールドがぐらぐら揺れた.その中でのハイステップ&スメアリングはかなり勇気のいるムーブであった.トラーバースしてカンテを登ると終了点に出た.トラバースの途中にfixのスリングがぶら下がっていた.

5P目のトラバース

6P:(Ⅲ)千村リード.このまま4峰に抜けた.

 4峰からは北尾根を下山するように5・6のコルまで下り,コルから奥又白側へ下って行った.踏み跡は明瞭で,登山道を彷彿とさせるような立派な白丸ペンキ印がついており,迷う要素はなかった.

 北条新村ルートは結局のところ3時間弱で抜けきることができた.アルパインらしい脆い岩場がアクセントととなり緊張のある登攀になった.

【松高ルート】

 7月30日.この日は下山日だったが、朝から晴れ間が広まっており、ただ下りてしまっては勿体ない。しかも、2人ともあの奥又白~パノラマコース間の急登にはうんざりだ。ということで、全装備を担いで松高ルートへ向かった.松高ルートを抜け、そのまま前穂北尾根を本峰まで登り上げ、重太郎新道から下山するプランだ。7時半ごろに取付き,11時ごろにトップアウト.昨日の北条新のとりつきから逆算しておそらくここであろうというところから取付いたが,支点が見当たらず,結局,2P目のバンドを左上するピッチの開始点までフリーソロで突破してしまった.あとはピトンに沿ってバンドを詰めるだけであるが,このバンドのラインも微妙にトポのそれとは逸れていたらしく,ピトンはあるものの乏しく、トポのグレードよりは体感,難しく感じられた.トポ上の3P目から正規ルートに乗り上げたようである.

1P:(Ⅱ)フリーソロで突破.

2P:(Ⅲ)左右田リード.上述の通り

2P目フォローの千村

3P:(Ⅲ)千村リード.松高ハングの下に出る.すっきりしたフェースでホールドもたくさんあるが,機能と同様脆く,体重をかける前にチェックが必要である.

3P目

4P:(5.9)左右田リード.人工ピッチであるが基本フリー突破できる.一部,外れそうなホールドがあり,A0してしまった.凹角で若干被っている.このピッチと次のピッチは、リードは空身で登ったうえで荷揚げを行った。

4P出だし

5P:(5.9)千村リード.このピッチも人工ルートであるがフリー突破できた.出だしのフェースがスタンスが乏しく難しいが乗越てしまうと快適.上部は回り込まずにクラックを登った方がハンドジャムがバチ効きで気持ちが良い.

5P目

6P:(Ⅳ)左右田リード.草付きまじりのスラブを左上すべきところを直上してしまったためかなり奮闘的なクライミングとなった.

6P目ルーファイを間違え直上してしまった

7P:おまけ.千村リード.6P目でへとへとになってしまいピッチを切ってしまった.ただの歩きだけであった.

 松高をトップアウトした後は前穂北尾根を縦走し,重太郎新道から岳沢,上高地へ下山した.

 今回は天気が微妙で行けるかどうかはきわどい所であったが何とか2ルートともトップアウトすることができた.いずれのルートも岩の脆さというものが感じられ,ピッチグレード以上の緊張感が感じられる内容であった.

おしまい.

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