2020/03/28
今回の山行に当たって、古原コーチ(御年96歳)に鹿島北壁に登ったと話したところ、じゃあ東尾根も行ってこいとの宿題を頂いていた。しかしながら調べてみると3~5月の記録しかない。年末年始の記録はネット上に50年前の2件のみしかなかった。これは正月にやるしかないということで企画された。
ちなみに古原コーチは別名?ペンネーム?が「鹿島槍之介」であり、鹿島槍を愛する男である。コーチの家には1950年前後に自身が東尾根を登った際の写真が大量にあり、名だたるルート開拓者と一緒に登っていた。
by千村さん
★エリア:北アルプス,鹿島槍ヶ岳東尾根
★日程:2020年1月1日~1月3日
★メンバー:千村(CL)、左右田(登攀隊長)、梶原(装備係)、山田(食事係)、綾城(天気図&記録係)、古矢(食事係・文責)
★コースタイム
1月1日
0655大谷原→0750東尾根取り付き0800→1400一ノ沢の頭
(偵察:左右田・千村)1430~1610二ノ沢の頭直下まで往復
1月2日
0735一ノ沢の頭→0910二ノ沢の頭
(偵察:左右田・千村・山田・綾城・古矢)1145~1530第一岩峰基部まで往復
1月3日
0745二ノ沢の頭→0850一ノ沢の頭→1125東尾根取り付き1200→1225大谷原
★ ★ ★
年始山行として鹿島槍東尾根の方に行ってきました。結果としては、第一岩峰基部で敗退という結果になりました。
1日、今日は一ノ沢の頭、うまくいけば二ノ沢の頭まで行く予定だった。入る前の天気としては、3日が良いということだったので、戦略としては1日に一ノ沢まで上がり、2日に二ノ沢+第一岩峰と第二岩峰のルート工作、3日にアタック、4日に下山という風に考えていた。
東尾根の取り付きまでは林道歩き。踏み跡がなく、この先もトレースなどないことが窺い知れる。やっぱりラッセルかと思う一方、今年初の東尾根を踏むことができ、しみじみとした気持ちになった。
東尾根の取り付きからは急登を進んでいく。モナカ雪だしラッセルがなかなかに重労働。これは一ノ沢までしんどいかと思いきや、なぜかみんな率先してラッセルをやりたがる。短いスパンでまわしていこう言いつつ、自分の番になるとなかなかトップをゆずらない。6人というマンパワーもあってか、とくに問題なく一ノ沢に到着することができた。
一ノ沢に到着後。千村さん、左右田さんは、二ノ沢までの偵察+トレース作り。残りのメンバーはテント設営+水作り。冬の装備を持ってV6に6人はちょっと入れるのか不安だったが、結果的には全然問題はなかったし、むしろ温かくて良かったように思う。
翌日2日。とりあえずテントを二ノ沢まで上げる。所々ナイフリッジを通過するが、前日のトレースのためか、特に危なさを感じることなく通過することができた。
二ノ沢の頭に着いたらテント設営。ここから偵察+ルート工作。ラッセルのため人数が必要とのことで5人で向う。ここの辺りは本当に雪が深かった。胸、傾斜のあるところでは頭までのラッセルになった。
第一岩峰の基部まで行って引き返す。これで翌日少しは楽になるかなと思いきや帰り道でトレースがかなり埋まっている。この調子で降り続けば今日のトレースなど消えてしまうだろう。
翌日、相変わらずの吹雪。天気予報を確認してみると、吹雪とのことであった。1日に鹿島東尾根でご来光を見て以来、ずっと吹雪いていたが、どうやらこの天気が続くらしい。千村さん曰く、新雪による不安定な雪壁、雪稜に6人で取り付くのは許容しがたいし、雪の接合が弱い中、第一岩峰より上で後輩たちをスムーズ確保する方法が思いつかなかったとのことであった。だからと言って確保無しで登れるメンバーだけでは、ラッセルの負担が大きい。鹿島東尾根を登るにはメンバー全員の技量が必要になってくるだろう。
一応、4日、5日を予備日として設定していたが、停滞して天気が良くなる見込みがないので撤退することにした。実際、鹿島槍は6日までガスの中から顔を出さなかったし、4日は大雪とのことだったので二ノ沢から一ノ沢までのナイフリッジの危険性を考えればここで降りておくというのは間違った選択ではなかったと思う。ただ僕は撤退の連絡をしたときに古原コーチからの「まだ粘れないのか」という言葉が胸に突き刺さった。撤退という判断は正しいものであるが、理性的なものを越えて何か後ろめたいものを感じた。
今回、千村さんは、 CLの自分が後輩の経験値を把握しきれていなかったために決断に踏ん切りをつけれず、撤退の判断をしたと言っていた。 僕は後輩として、CLに自分の能力を提示することができなかったし、また提示できるだけの能力を持っていなかったように思う。そしてこれは僕だけではなくみんなが思っていることのようだった。
東尾根の取り付きに戻ってきたときにみんなで決めたことがある。また挑戦しよう。そう、また挑戦することができる。今回のメンバーは、全員すさまじく山に登る連中だ。今度来るときはもっともっとレベルアップしていることだろう。