2020/03/28
滝谷第一尾根、第四尾根継続の予定で、夏休み最後の山へ。
今回も順調に核心を突破し、残るは楽しいⅣ級クライミングのみとなった。そこに突如現れたのが崩壊したBフェース。トポや過去の記録で見たラインは消滅していた。崩壊箇所の右側を直登しようと試みたが、あまりの岩の脆さに思い切りが付かない。敢えなく交代したが、左右田も進めず、T3に戻った。初めて自分たちの力及ばずに敗退を経験した。同ルート下降中にロープの損傷も見つかり、第四尾根も諦めた。
散々な結果だったわけだが、アルパイン的冒険要素に溢れていて、お腹いっぱいの山行だった。
※2017年以降の第一尾根再登情報をお持ちの方いらっしゃれば、教えてください!
★エリア:北アルプス,北穂高岳西面,滝谷第一尾根
★日程:2019年8月25日~27日
★メンバー:左右田,千村(文責)
★コースタイム
8月25日
0640新穂高温泉 → 0725穂高平小屋 → 0750白出沢登山道分岐0810 → 0955旧荷継小屋跡1015 → 1240白出のコル(穂高岳山荘)1320 → 1540北穂南稜のテント場
8月26日
0405テント場 → 0410北穂小屋0420 → 0425B沢入口 → 0450B沢下降終了 → 0500クラック尾根取付き → 0520第一尾根取付き0530 → 0725T3テラス → 0830T3テラス上5ピッチ目から撤退開始 → 1000第一尾根取付き1025 → 1100B沢 → 1130B沢入口1150 → 1210北穂小屋1230 → 1250テント場
8月27日
0620テント場 → 0720最低のコル → 0815白出のコル(穂高岳山荘)0835 → 0930旧荷継小屋跡 → 1010白出沢渡渉点1025 → 1055白出沢登山道分岐 → 1120穂高平小屋1140 → 1215新穂高温泉
★ ★ ★
★ルート詳細
1P(Ⅱ, 50m)左右田リード
T4から斜め左に明瞭に走るバンドをトラバース.開始点のピンは脆く,5本とも抜けたため,打ち直しつつ,手持ちのピトンを打ち足してアンカーとした.バンドは脆く持った岩はグラグラ動いたがほぼほぼ歩きで,2P目のジェードルが見えるテラスまで伸ばしたがロープ(50M)がギリギリ足らなくなり,目前の岩のクラックにカム#1~3の3点支持でアンカーを構築した.
2P(Ⅳ, 25m)千村リード
きれいなジェードルを登る。カムがなかったのでトライカムを使って支点を取ったりしたが、よく見ればピンは十分にあった。脆さゆえかガバホールドは全て消えており、丸っこい外傾ホールドを拾ったり、スメアの効かない岩に無理やりスメアリングしたりして登った。
3P(Ⅴ・核心)左右田リード
5.10-ぐらい?見た目は寝ているがだんだんと立ってくる.手はあるものの足のスタンスが乏しい.ピンが右の壁にベタ打ちで各停A0で突破した.ワイドクラックである.最後のテラスへの小ハングはなかなか痺れるものであった.手足が無いので仕方なくハング出口の地面をプッシュして腕力だけで乗り上げた.一応,ガバっぽいホールドはあるのだが,持った瞬間に動いたので使えなかった.カム#0.75,#3を用いた.ハングを乗り越した後はテラスを少し進み,テラス奥のガレた凹角(崩壊している?)を詰めてリッジに出た.
4P(50m、Ⅰ、コンテ)
T3の草付きリッジ上のトレースを歩く。1畳ほどのビバークポイントもあった。
5P(敗退、千村リード→左右田リード)
「日本の岩場」のトポによると左上、2016年の記録を見ても左上しているが、その記録の写真にあった左上ラインは崩壊して、跡形もなくなっていた。直上ラインが取れそうな希望が僅かにあったので5mほど登り、ハーケンを打ち足してランナーを取ったものの、そこから上に安全に登れそうなラインが見出せず、敢え無く敗退。左右田にバトンタッチし、更に1m上がるも、岩の脆さに負けてギブアップ。信頼のおける残置ハーケンを打ち直して、そこにプルージックを結んで、それを支点にロアーダウンした。他に見出せそうなラインがなかったので敗退を決め、同ルートを下降した。
下降(4P)
全て強固な残置ハーケンを2~3個、捨て縄で繋げて懸垂支点とした。1回目、3P目終了点から2P目終了点へ。2回目、ジェードルの5mほど左側にあった支点まで。3回目、右下へ15mほど斜め懸垂し、1P目途中の支点まで。4回目、アプローチルートに降り立った。1P目は斜上していたので、沿わずに真下に下りた。
初めて、自分たちの力及ばずに敗退した。崩壊していたとはいえ、取り付いたら100%抜けていた僕たちにとっては初めての経験だった。 だが、最後のハーケンを打ち込みながら感じたのは、悔しさでも悲しさでもなく、爽やかさだった。今の君の力はここまでだよと、滝谷に言われているようだったし、最後のハーケンは自分の実力の位置を示しているようだった。そう、僕らは怪我なく元気でいる限り、何度だって戻ってこれる。もしまた実力がついて突破できる気がしたらまた戻ってくればいい。もちろん1つ1つの山行に本気で臨むわけだけど、命懸けてるわけじゃない。多分僕は近いうちにまたこの場所に戻ってくるのだろうけれど、また同じ場所で敗退したとしても、あの長い長い撤退路を今回と同じ気持ちで下りるんだと思う。
再登情報、求ム。
★おまけ
アプローチ
北穂小屋から大キレットへの縦走路を10分ほど下る。縦走路上に白ペンキで大きく「浮石注意」と書いてある場所があり、そこから縦走路を外れて30mほど滝谷側に歩くとB沢のコル。B沢のコルは白ペンキで書いてある。B沢のコルはまさに岩の墓場なので、(先行パーティーがいなければ)多少の落石は気にせずにどんどん下りる。1つ目の懸垂支点のある場所はクライムダウンできる。2つ目の懸垂支点(右岸側)の場所はクライムダウン不可能なので懸垂する。北穂小屋のおやっさんは懸垂は必要ないと言っているが、崩壊などで状況が変わったのだろう。そこから更に5分ほどで左岸側に黒のフィックスロープが現れる。ここからは場合によってはロープを出しても良いと思う。フィックスに沿って登ると、ペツルで補強された懸垂支点あり。ここから更に脆い草付きを右上するのが、クラック尾根の取り付きにダイレクトで行けるショートカットルート。本来はここから懸垂して取り付きに行くらしい。クラック尾根取付きには白ペンキで「クラック」と書かれているが、文字が消えて「タン」としか読めない。ここからは真横に第二尾根の側壁が聳えている。その間の少し奥まったところに、尾根というより壁といった感じで立っているのが第一尾根のCフェース。取り付きは少し下から伸びている第一尾根末端とCフェースがぶつかるところだ。左上する明瞭なバンドがあり、これが1ピッチ目。クラック尾根取付きからは適当にトラバースしていける。
装備
ダブルロープ2本、カム#0.75~#3、ナッツ一式、ハーケン6本、ハンマー各1本
#4もあった方が良いでしょう
おしまい。